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はじめに

私はこの30年近くの臨床経験の中で、初期のころを除いてずっと一貫して手作り食をお勧めしています。

その理由は明快です。
いくつもの病気が手作り食によって解消するからです。

だからと言って、手作り食をすべての人に強制したり薦めたりはしません。
その時かかっている病気のメカニズムを知って頂いて、どのような解決方法が有るかを提示する中で、根本的な理由がそこにあると分かった方にお奨めしています。

 

なぜ、手作り食を薦め始めたかというと、それはかつて私は、逆にドッグフードを薦めていたからです。
事の始まりは、私が駆け出しの勤務医であった昔にさかのぼります。

 

その当時、まだドッグフードが十分に認知されていなかったころの事です。
まだ右も左も分からない時分に、私はいろいろなセミナーに積極的に参加して勉強をしていました。
そんな中で出会ったのが、「米国の獣医さんが推奨するフード」と称して売り出された、某メーカーのフードでした。
セミナーの中では、そのフードのメリットをこれでもかというほど説明しており、その内容に感化された私は、早速、院長に許可をもらって飼い主様にフードを薦め始めました。
そのころの私は、良い事を推進していると信じ切っていたので、微塵も疑いを持つことはありませんでした。


しかし、程なくして問題が起こり始めます。

 

フードを薦めたワンちゃんの多くに、黒い耳垢が出る外耳炎が流行りはじめたのです。
マラセチア性外耳炎の始まりです。

その当時は、マラセチアの分類も十分でなかったので、ピチロスポーラム・カニスとよばれていました。酵母菌の感染による外耳炎と考えられていました。

当時の私にとっては、マラセチア性外耳炎はなかなか一筋縄ではいかない、難治性の病気という印象でした。酵母菌に効果があるとされる外用薬を片っ端から試しては、くじけるという事を幾度も繰り返していました。
それは、私だけに限らなかったようで、多くの先生方が、マラセチアに効く薬は無いかと、方々で尋ねておられました。


そのような状況の中で、私は、転機となる、ある出来事に遭遇します。

 

私が切々と説明をして、フードを与え始めていたある飼い主様が、フードを止めたいと言われたのです。
私にしてみれば、こんな良いものを止めるなんて何を考えておられるのかな? と思いつつ、その後の経過を見ていました。

すると、あれほど治療に苦労していたマラセチア性外耳炎が、見る間に治ってしまったのです。

何かの偶然だろうかと思った私は、フードを食べていながらマラセチア性外耳炎に悩まされていた他の数頭を、フードから離脱してもらう事にしました。

 

すると、何という事でしょうか、そのすべての犬のマラセチア性外耳炎が治ってしまったのです。

 

フードを始めてマラセチア性外耳炎になったワンちゃんたちは、私がフードを薦めたせいで病気になっていたのです。

臨床を始める前に、私はニューヨークのコロンビア大学の付属病院で研究員をしていました。
その頃聞いた話で、論文や学術講演はスポンサーの意図が強く反映されるのでそのまま鵜呑みにして信じてはいけないと教えられていたのが、本当に意味がよく分かりました。

 

これを機に、私は人にものを勧める前に、よーく自分で吟味をするようになりました。


そして、それ以来、人にドッグフードを薦める事は一切なくなりました。

おかげで、私の診るワンちゃんには、マラセチア性外耳炎の治らないワンちゃんはほとんどいなくなりました。

もちろん、「手作り食は嫌だ!」「ドッグフードはやめられない」という方達は除いて、の話ですけどね・・・。

 

これが、私が手作り食を薦めるようになった理由です。